もっと知りたいエル・グレコ
- 価格
- 1,980円(税込)
- 刊行
- 2012年10月
- ISBN
- 9784808709563
- Cコード
- 0071
- 判型
- B5
- ページ数
- 72
内容
■クレタ島のイコン画家として出発したエル・グレコは、イタリア滞在10年を経てスペインに移住し、カトリックの宗教画家として大成しました。本書は時代の変貌に足並みを揃え変遷した画家の美の軌跡を、時代背景をふまえつつ辿ります。複雑なルーツをもつエル・グレコ芸術の本質と、時代を超えて感動を呼び続ける魅力を探る画期的な入門書です。
■真筆とされる数々の傑作を紹介します。早熟な画才を物語る初期の意欲作、静と動が見事に共存する衝撃のスペインデビュー作から、写実と幻想、地上と天上が融合した壮大な祭壇画、教養ある知識人たちに愛された哲人芸術家の眼差しを感じさせる肖像まで、見どころが満載です。20世紀になって、忘却から復権へ──「奇矯画家」から「セザンヌの兄弟」へ、評価が大きく転回したこの画家の、一筋縄ではいかない多面性と現代性に触れることができます。
■サインに込められたメッセージや、旧蔵書に残る書き込みから浮かび上がる画家の美学など、謎が多いと言われてきたこの画家の内面に、さまざまな角度から迫ります。
■収録作品:ジュリオ・クローヴィオの肖像/盲人を癒すキリスト/聖母被昇天/聖三位一体/聖衣剥奪/聖セバスティアヌス/聖アンナのいる聖家族/神聖同盟の寓意/悔悛するマグダラのマリア/聖ペテロの涙/聖マウリティウスの殉教/オルガス伯爵の埋葬/聖ヨセフと幼子イエス/聖マルティヌスと乞食/受胎告知/キリストの磔刑/キリストの復活/胸に手を置く騎士/自画像?/ある枢機卿の肖像/トレード風景/慈愛の聖母/聖母戴冠/聖母被昇天/オルテンシオ・フェリックス・パラビシーノの肖像/フランシスコ・デ・ピサ博士の肖像/ラオコーン/黙示録第五の封印/羊飼いの礼拝/など
目次
“だれも模倣し得ない”アヴァンギャルドな画家エル・グレコ
序章 ギリシア人画家、ドメニコスからエル・グレコへ
もっと知りたい1 イコンの伝統とポスト・ビザンティン美術
1章 イタリアでの研鑽と西欧型絵画
●ヴェネツィア時代──西欧画法の習得
●ローマ時代──ファルネーゼ家の寄寓者
傑作クローズアップ1 《盲人を癒すキリスト》
2章 トレードに現れたギリシア人画家
●スペイン画壇デビュー
もっと知りたい2 トリエント公会議とエル・グレコ
●信仰と芸術の狭間で
3章 トレードでの成功、カトリックの宗教画家へ
傑作クローズアップ2 《オルガス伯爵の埋葬》
もっと知りたい3 エル・グレコの美術理論──『美術家列伝』と『建築十書』から
●大規模な祭壇装飾プロジェクト
もっと知りたい4 アラゴン学院付属礼拝堂──謎を残す祭壇衝立
●肖像画家エル・グレコ
もっと知りたい5 エル・グレコの工房と分業の実態
傑作クローズアップ3 《トレード風景》
●訴訟と経済的困窮
もっと知りたい6 エル・グレコの訴訟と問題の核心──画料をめぐっての対立
傑作クローズアップ4 《無原罪のお宿り》
●晩年のパトロンたち
●異教的主題
●光と炎のヴィジョンと詩学
●トレードなくしてエル・グレコなし
終章 エル・グレコと近・現代美術
エル・グレコをもっと知るためのキーワード
●コラム
ギリシア人としての誇りが刻まれたサイン
エル・グレコと“マドンネーリ”
ファルネーゼ枢機卿への手紙
エル・グレコがオマージュを捧げた画家たち
エル・グレコの彫刻
エル・グレコと日本
大塚国際美術館にエル・グレコを訪ねる