ジョン・エヴァレット・ミレイ ヴィクトリア朝 美の革新者

荒川裕子 著

価格
2,860円(税込)
刊行
2015年12月
ISBN
9784808710477
Cコード
0071
判型
B5
ページ数
160

内容

□ラファエル前派の一員にして英国ヴィクトリア朝時代の代表的画家ミレイ。本書は、その芸術が当時の社会の中でどのように受容されていったのかを踏まえながら、人々の求めるものを的確につかむ希有な才覚と時代の一歩先をゆく独自のスタイルを貫いた絵画の革新者の実像に迫る。
□ラファエル前派時代のミレイは、それまでの常識を打ち破る鮮やかな色彩や緻密な描写で、酷評を浴びつつ、前衛芸術家集団の急先鋒として活躍した。とくに名作「オフィーリア」の与えたインパクトは国境を超えて途方もない広がりを見せた。しかしこの画家の真価はグループ解体後、20歳代半ばからの40年余の歩みを抜きに語れない。若くして画壇の反逆者として頭角を現し、国民的人気画家として生涯を閉じるまで、終生、時代のトレンドセッターであり、新しい絵画表現の開拓者であり続けた。
□きわめて鮮やかな色彩や、考え抜かれた構図、ポーズや表情が見る者に引き起こす喚起力──言葉にならない深い情感を意識していたミレイは、その試みをどのように深化させていったのか。本書では、ラファエル前派以後の作品──たとえば創意に富んだブック・イラストレーション、対象の個性を巧みにつかみ取った肖像画、清澄な大気をたたえた風景画、唯美主義を予告した作品や、流行を作ったファンシー・ピクチャーやプロブレム・ピクチャーなど代表作を紹介し、ミレイが生涯を通じて生み出した絵画表現の多様さを通観。従来の偏った評価を見直し、いまなお色褪せない魅力の根源をさまざまな角度から探る。

目次

Prologue ラファエル前派の画家からヴィクトリア朝絵画の第一人者へ

Part1 神童から反逆者へ──ラファエル前派の絵画革命
   Column
    ・ラファエル前派の成立と展開──第一世代の誕生から終焉まで
    ・シェイクスピアと絵画──名優の肖像画から画家独自の構図まで
    ・ミレイ、ラスキン、エフィー──スコットランドで芽生えた愛と葛藤

Part2 主題と無主題のあいだで──写実を通した暗示の試み
   Column
    ・唯美主義の美学──美に満たされた、主題のない絵
    ・線の芸術──ミレイの素描とイラストレーション

Part3 伝統とモダンの融合──国民的画家への道のり
   Column
    ・ファンシー・ピクチャーの世界

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著者プロフィール

荒川裕子 著

神奈川県藤沢市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。法政大学キャリアデザイン学部教授。専門はロマン主義からヴィクトリア朝までを中心とするイギリス美術史。主な著書に『ジョン・エヴァレット・ミレイ:ヴィクトリア朝 美の革新者』、『もっと知りたいラファエル前派』、『もっと知りたいターナー改訂版』(以上、東京美術)、監修・執筆に『ラファエル前派 英国ヴィクトリア朝絵画の夢』展図録、『テート美術館所蔵:コンスタブル展』図録(以上、朝日新聞社)、共著に『ヴィジョンとファンタジー:ジョン・マーティンからバーン=ジョーンズへ』(ありな書房)、『ロンドン:アートとテクノロジー』(竹林舎)など。主な訳書にサム・スマイルズ『ターナー:モダン・アーティストの誕生』(ブリュッケ)、ウィリアム・ゴーント『ターナー』(西村書店)など。